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2009.09.12    鈴木和子さんの国際教育学会発表原稿

算数・数学の学力底上げはできる!

鈴木和子(すくーるダンボ)

《はじめに》

計算のプリント教材を使った学習教室で、幼児から大人までを対象に17年間、約80名を指導。5?6歳の頃に学習を始め、7?8年の間ほとんど毎日継続して学習した子供たちがつまずく計算は、中学生や高校生でプリント学習をはじめる生徒たちがつまずいている計算とほぼ一致することに気づく。

 学習する生徒自身が自己情報を持ち、繰り返し練習することで、小学校低学年からつまずきやすい計算の習得はもちろん、中学生や高校生であっても、小学校で習得しそこなっている計算をきちんとやり直すことができ、学年レベルの数学に取り組む力がついていく。

 どのような計算でつまずいていたかのデータを基に、算数・数学の学力をつけていった生徒の実例を紹介し、底上げのための提案をする。

《5,6歳で学習を始めた子供のつまずき》

5,6歳で学習を初めて7?8年程度継続している子供たちに繰り返しの多いのが、横式の足し算の計算(+1?+9までの繰り上がりのある足し算と、2桁同士の繰り上がりのない横式の足し算)。次に多いのが横式と3桁同士の筆算も含んだ引き算。

100枚以上を繰り返しているプリントは、どれも、+1の計算(問題数が少ないもので50問、多いもので84問。すらすらできると3分台)

100枚以上繰り返すプリントをやっていた時点ではどの子も小学校に入学していたが、足し算と引き算のプリントを全部終えるまでに小3になっている場合もあった。小学校に入学する頃の6歳程度の子供にとって足し算引き算の習得はとても時間のかかるものだということがわかる。しかし、足し算の習得に時間がかかった子たちが学校の勉強で困ることはなく、小学校を卒業する頃には小5、小6相当あるいは中1相当のプリントまで進んでいた。

足し算から引き算までのプリントができれば掛け算は繰り返しが減り、割り算も解き方のコツがつかめれば繰り返しは足し算引き算より少なくなっている。小学校の低学年で足し算引き算を桁数の多いものや横式のまま解くものも含めて深くじっくり学習して習得するのが、その後の学習についていける下地になる。

 

《中高生でのつまずき》

5,6歳で学習を始めた子供たちが繰り返しの多かった足し算や引き算は、中高生でプリント学習を始める生徒のほとんどがつまずいている。

どのプリントから学習をはじめたらよいのか知るために何種類かプリントをやってもらうと「15+8」のような「繰り上がりのある2桁+1桁」や、「23+15」のような「繰り上がりはない2桁同士の足し算」が「横式で120問」あるプリントはほとんどの子が、すらすらできない。+6以上を足すのが苦手ということも多い。

「すらすらできる」というのは、鉛筆が止まらずにすっすっと答えを出している状態で、ミスも三つ以内。すらすらできると5分程度のプリントに7?8分かかる。その状態だと途中で手を止めて考えていることが何回かおきる。

中には横式のままで計算できず、縦式に書き直して筆算でやる子もいる。中高一貫の私立に通っている中1の子は縦式に直して計算していた。横式の足し算が終わった後、ためしに正負の計算や文字式をやったら、二桁の数字が出てくると縦式の筆算に書き直して計算し、中学の問題を一問解くのにとても手間取った。+6から+9までの復習をした後で中学の問題をやったら横式のまま計算できるようになった。

中学以降の数学では方程式や式の展開や因数分解をはじめ横式が多いので、2桁程度までなら横式のままで計算できることが中学の数学をスムーズに学習する上で重要。

《中学生の事例》

中学生で学習を始めた二人がどのような計算でつまずき、どんな特徴があったか。

    Aさんの場合

3で学習を始めたAさんは、足し算の繰り返しが一番多い。特に繰り返しの多かったのが+4ばかりの計算。

この子の特徴は1枚目をやったときのミスが多いこと。繰り返していると、次第にミスは減るが、少なくなったミスの中でもいつも同じ間違いがあり、8+48+6というような特定の数を間違いやすいことがわかった。間違うものだけを取り出して別の紙に書いて数回練習したら間違わなくなった。

割り算からは時間もかかり、一枚目ではすらすらできるめやすより5分以上オーバーすることが多く、ミスも10個以上のことがあった。分数も繰り返しが多い。帯分数を仮分数に変えたり仮分数を帯分数に変えることがまったくできなかった。

一年程度で通分の必要な異分母の分数計算まで学習が進んだ。分数ができるようになったら三角比の計算もできるようになった。

Bさんの場合

1で学習をはじめたBさんは発達障害があり特殊支援学級で数学の授業を受ける。学習の開始はやはり横式の足し算。+2の練習からはじめた。

横式の足し算もすらすらできなかったが、さらに繰り返しが多かったのが筆算の掛け算。3桁×2桁の筆算の掛け算で掛けていく手順がなかなか理解できなかった。また割り算も繰り返しが多いが商を推測するのに時間がかかった。しかし、商を立てた後の計算は滞りなくできる。筆算での3桁同士の引き算をすらすらできるまで習得した効果が出ている。

割る一桁の割り算が終わる頃から中学の数学もプリントや教科書で平行して学習。桁数の少ない割り算までがすらすらできていれば、整数だけの問題ならやり方さえわかれば中学の数学もかなりスムーズに解くことができる。

中1で入会し、分数計算まで進んだ中3の時には一次関数や連立方程式、式の展開、因数分解、平方根の計算などが解けるようになった。

 

《習熟すべき計算の内容》

算数・数学の学力の底上げのために習熟する必要があるのは次のような計算。

1.足し算

繰り上がりのある2桁+1桁・2桁同士の足し算は横式のままで答えが出せる。

2.引き算

 繰り下がりのある2桁?1桁や2桁同士の引き算は横式のまま答えを出せる。

引かれる数が3桁で10の位に0がくる繰り下がりのある引き算の筆算が間違いなくできる。

3.掛け算

3桁×2桁までの筆算の掛け算ができる。

450×500200×60のような0を含む掛け算は横式のまま答えが出せる。

4.割り算

あまりのある横式の割り算(九九で解いてあまりの出るもの、400÷200,600÷30のように0を含むもの)は横式のままで答えが出せる。

 割る2桁以上の桁数の多い筆算の割り算が間違いなくできる。

5.分数の計算

帯分数と仮分数の互換、分数と少数の互換、約分、異分母の分数の足し算引き算、分数の掛け算割り算

《まとめ》

 私の教室では、時間を計ることや答え合わせは子供が自分でやり、プリントをするのにかかった時間やミスの数、どんな間違い方をしたかなどの情報を子ども自身が持っているので、できないプリントは自分から繰り返し練習する。子供が自分で習得したかどうか判定できる時間やミスの数という基準があると、指導者がやらせようとしなくても、子供は自分から繰り返す。

 1日の練習時間は10分か15分程度でも、毎日続けていればできるようになっていく。できないことの上にさらにできないことを重ねていかないことが大切。

そのためには、

1.学年の枠にとらわれず、個々の生徒のつまずいているところを繰り返し練習する。

2.競争ではなく、その子なりにステップアップしていける援助をする。

3.習得のための段階を踏まえて、ひとつの計算を基本形だけでなく多様なパターンまで深く学習する。

指導する教師や親は「手間をかけずに早くできるようになることが良い」「一度でできたらえらい」というような価値観を持たずに、その子なりに一段階ずつ習得していける時間を保障することが基礎学力の底上げにつながっていく。

子供たちはできるようになりたいと思っているから、できるようになる実感があれば自分から進んで練習する。必要なのは、テストではなく子ども自身が自分の状態を知って取り組める練習。漠然とした「できない」「苦手」から具体的な「これができない」を見つけ、一人ひとりのつまずいているところをしっかりと習得することで、多少の時間的なずれがあってもどの子も中学程度までの算数・数学の学力を身につけることが可能。

投稿者 tao-kyo | PermaLink | トラックバック(0)